ITに興味ある方には、ITコ−ディネ−タ−(以下ITC)という資格は大変楽しく、新しいことを学べるので、是非ともお勧めしたいというお話をさせていただきます。
10月15日。ITC協会ホ−ムペ−ジ上で合格発表がありました。私は運良くITCの資格を取得できました。全国的にも第1期生と言うことで、2・3のコンピュ−タ−系雑誌・新聞にも掲載されました。何はともあれ、資格取得ができてホッとしています。もっとも、多大なお金(研修費だけで68万円)と時間と労力をかけ、チ−ム学習で動いたので、全員合格と思っていたのにかかわらず、受験仲間が試験に落ちたことが残念でなりません。このITC資格取得のきっかけは、今年2月15日夕方、池下のルブラ山王で、名古屋税理士会に対してITCの説明会が開催されたことにあります。前会長の大西孝之先生がITC協会の筆頭副会長でいらっしゃった関係もあり、関東で正式発表された翌日のことでした。その説明を聞くうちに、「これからの時代はこれだ!」と思い、その日の内に、私の今年度目標テ−マをITC取得に絞ることにしました。チャンスを与えてくださった大西先生にはこの場をお借りして、心より感謝申し上げます。
資格取得のためには、4日間の専門知識研修と15日間のケ−ス研修に参加します。私はまず、東京・池袋に行き、どこよりも早い専門知識研修(4日間)に参加しました。このコ−スで、ITCの内容がおおむね判断できたと思います。ITCとは何をするのか、何を学べばいいのかの概論と、自分に適しているか否かの判断をする場だったと思います。毎日ミニテストがあり、4日間の最後にアセスメントテストがありますので、先に進むべきか否かはおおむねこの研修中に判断できます。
15日間のケ−ス研修は大阪で受講しました。7月11日から9月24日まで3ヶ月間、毎週土・日曜日に大阪へ通い、時間的にも金銭的にもずいぶんかかってしまいました。日頃土日は平日の調整的な仕事に当てていますので、正直なところ事務所運営と業務に大きなピンチを招きました。しかし、通学するうちにその面白さに引込まれ、「ともかく休まなければ何とかなる。」と言う思いで通いました。IT系の仲間が出来、大阪の空気が馴染んできて、むしろ今は通えないことに寂しさを感じるまでになりました。このあたりは、今毎日この仲間でメ−リングリストを通じて情報交換することで紛らわしています。
ITCとは、経営とITベンダ−の橋渡しがその役目となります。コンピュ−タを企業に導入する場合、どこの中小企業にも専門家がいることは少なく、ベンダ−の提案任せになっていて、この点が中小企業へのIT導入の最大の壁になっています。そこで、政府は、アメリカに対して「遅れた十年」を取り戻すべく、IT基本法を制定し、中小企業へのIT導入を円滑にするような施策を設けました。特にその中では人材育成としてITCを2005年までに1万人輩出しようとしています。また、中小企業白書でも平成13年度の施策の第1章はこの内容ばかりです。要するに今は、ITCへの予算取りは出来ているが実行する人材がいない状態だと言うことです。
何を学べばいいのかについては、前半・後半(上流・下流)で別れ、上流は経営者の考えをサポ−トする経営戦略の学習、下流はITベンダ−の提案を判断することを含めて、コンピュ−タを企業に導入・運用するための知識(システム設計のさわりを含む)でした。幸い私自身は上流については長年中小企業診断士の3次試験実習指導員をやらせていただいていて、表現こそ違えほぼ同じような作業でしたので、経営戦略等は理解でき比較的楽でした。しかしながら、下流はほとんどIT系の言われることをまとめるだけに終わってしまい、もっぱらジョ−クとチ−ムの盛り上げでお茶を濁してしまいました。全体を通じても言葉を理解するのに戸惑いがあります。しかし同時に、新しい理論や新しい言葉を次々と学んでいくことの喜びを享受できました。
BSC・CSO・ERP・ASP・KPI・KGI・CSF・RFI・RFP・DMM・ERD・DFD・SLA等々「何のこっちゃ!」。3文字略語だけでも沢山あり、この呪文のような単語がチ−ムで議論する際の会話の中に飛び交うわけです。慣れないとさっぱりわからなくなります。基本的にはアメリカの国際公認会計士協会(IFAC)が作成している「ITCのためのガイドライン」を日本語に訳し、テキストとして研修を進めているようです。ITCの学問領域すら明確に固まらず、IFACの訳も完全にはなされていない段階でのITC研修でしたので、各所に研修カリキュラム自体のバグ?もありました。全てがこれからの資格、未知数の資格だと言うことの証明でもあります。
研修は全てチ−ム編成で、常に発表担当者が持ちまわりのプレゼン合戦で進行します。正直な感想として、大阪会場には何人かの税理士諸氏が参加しておりましたが、上流下流通じて影が薄く、チ−ムから浮いてしまう存在の方が多かったかに思われます。通常の税理士業務からすれば、なんら接点のない領域だからやむをえない事だと思います。しかし、接点が無いのに、特別認定してくれるわけですし、新しい知識を学ぶ充実感があります。さらに、これからの時代プレゼンテ−ション能力は、税理士の現場実務にとっても必須であるものと考えます。また、ITC協会との連絡及びチ−ムでの宿題等の情報交換は全て、メ−ルで行われます。したがって、研修でチ−ムメイトに迷惑をかけないようにするためには、メ−ルをある程度こなして、パワ−ポンイトが少し動かせる必要があるかと思います。この練習には絶好の場ともなります。
ケ−ス研修の進め方は、最初の5日間(ショ−ト研修)で経営系の資格者を集め、弱点とされる下流情報系の分野を集中的にやりました。残り10日間(スル−研修)で、IT系の資格者と合流し、××商事株式会社(年商340億、資本金7億5千万円)にERPパッケ−ジを導入する計画にITCとしていかに絡んでいくかというケ−ススタディをやりました。チ−ムで議論しながら回答を作成し、経営者に説明すると言う設定でグル−プ別の発表と質疑応答を繰り返します。大阪会場は西日本で最初に取ろうとする意気込みの強い人の集まりだった為か、インストラクタ−も驚くほど白熱した議論がなされました。実践ではケ−ス研修のような大きな事例にあたる事はないと思いますが、最善のモデルケ−スを一通りやりきることで、ひとつのベンチマ−クができ上がります。今後、あらゆる面でコンサルティングの参考になる可能性もある研修だったと思います。
内容が多少飛躍しますが、ITC協会のITC補募集の広告が面白いので紹介いたします。日経新聞などの広告欄にも一時掲載されていました。「<維新伝人> 幕末の激動期。薩長同盟の橋渡しをし、維新の道筋をつけた男、坂本龍馬。その行動を支えたのは、優れた人脈と海援隊の活動がもたらす情報であったという。そして、現在---。この国は、情報革命という新たな時代のうねりの中にいる。あらゆる企業が、この変革を乗りきるためには、その情報化を支援しながらともに明日を切り開く、龍馬のようなリ−ダ−が必要です。「経営」と「IT」、「人」と「人」のかけ橋となって経営の戦略的情報化を指南する、新しいコンサルタントです。」
税理士は3年間だけの特別認定試験で何とか合格できるはずです。試験の内容については中小企業診断士の情報系の仲間が、「特認試験以外でこの試験に受かるのはかなり骨が折れるレベルだ。」と言っております。また、5・10年後までもITと言う言葉は存在するかどうかもわかりません。間違いなく近い将来、ITは電気や水道と同じレベルになるからです。しかし、中小企業が今現在IT導入で苦慮していることも事実です。だからこそ、私ども税理士は、顧問先へのコンサルティグの一環として、コンピュ−タ−の導入についてもお話ができるようになるべき時だと考えております。ITに興味がおありで、メ−ルができて、パワ−ポイントを使ってみようという方は、今がチャンスです。是非、ITC資格を取得されることをお勧めいたします。 |