平成17年7月14日
総務省 殿
名古屋税理士会
井上 新
0562-92-8720
arata@iarata.com

井上パブリックコメント
-オンライン利用促進手続(案)に関する意見-

 財務省のNO1〜NO62の範囲に関しまして、税理士業務として日常の実務の中で「e-TAXシステム」を継続的に利用している者として下記の意見具申いたします。

NO15 納税証明書の交付請求

納税証明書を事務所で電子で取得できることは大変便利です。
 しかしながら、下記のように実際のデータシートを電子で求めたものは紙で出してしまうと、納税証明書ではありません」となっています。「電子納税証明書のデータファイルが法令に定める「納税証明書」となります。」ということで、これが銀行の窓口で確認できる体制であればいいのですが、各銀行がこれを確認している状況にはありません。
 結局、紙で再度取り直すことで対応しています。何の意味もない、制度になっているどころか、納税者は370円損した感じになります。

納税証明データシート

平成16年11月5日の名古屋国税局との座談会で、名古屋地区は各銀行にこれを読み込むソフトをすべて渡しているという説明でした。しかし、半年以上経過した現在、実際に支店レベルまでこの納税証明書の電子データを読み込む体制にはなく、仮に読み込んだとしてもそれを従前の資料に代替することはできないようです。
 すなわち、電子納税証明書を利用する(受領する)側の体制が整わない限り、何の意味のない、手続きになります。銀行や建設業の許認可事務所等の電子に対する認識を高めることを先行させる必要があります。

NO16〜23 各種届出書

届出書に関しましては、電子申告を常に利用している者にとっては大変利便性を受けることは明らかです。
しかしながら、そもそも現行の制度では、はじめての者が電子申告で従前の状態を変更しようと思っても、「電子申告の開始届出書」を紙で出して、時には2ヶ月の時間を要して、IDとパスワードを取得することになります。これでは変更したことを忘れてしまい、届出を失念する事態も発生しかねません。
このことから考えても、ID及びパスワードの発行はネット上でリアルタイムに行うべきであります。さもなければ、当然、紙で出したほうが安易で、届出書のために事前申請をして、住基カードを取得する者は稀有と思われます。
IDパスワードはネットで即日発行し、開始届出書と出すと2ヵ月後に送られてくる同封の不具合が多いために使うことのないe-TAXソフトをセットでなければ送付できないという考え方をやめていただきたいと思います。

NO24 更正の請求書

更正の請求書を提出するにあたっては、大量の証明すべき添付書類が多くなるものと思います。この場合、現行法では電子申請をしても添付書類について、別途郵送をせざるを得なくなります。
 添付書類をイメージスキャナー等で読み込んで、同時に添付書類として送信できるようにすべきであります。
 e-文書法が改正されて、文書保存はできるようになりましたが、原稿の法律ではその電子署名に住基カードが使用できないということに憤りを感じております。
 電子申告をするにあたって、関与先納税者に対して、他に利便性のない住基カードを取得していただくことを説得することは、大変な苦労であります。また、住基カードの取得は納税者にとって自主的な取得費用の出費を強いることになります。その過程を経て取得していただいた住基カードが使用できない法律であるということは、政府の電子化に全く逆行している制度であるといえます。
 e文書法の早期改正とともに、イメージスキャナーによる添付書類を認めていただき、更正の請求の場合においても、ネット上ですべて完了できるようにすべきであります。

NO25〜46   支払調書(及び同合計表)

支払調書は各企業が提出する場も含めて、早急にイメージスキャナーでの読み取りをしてすべて電子で送付できるようにすべきであります。

NO47    事業年度を変更した場合等の届出

手続きに必要な添付書類として、登記簿謄本を求めています。この場合、オンラインによる登記情報サービスの利用を認めているにもかかわらず、オンラインで取得した紙情報を、郵送するということになっています。かたやオンラインで取得し.、それをアウトプットして郵送する。誠に片手落ちの制度といわざるを得ません。
 スキャナで読みとり、もしくは電子データのまま、添付書類として伝送できるようにしなければ、わざわざこのシステムを利用しようとは思いません。

NO52〜57  徴収高計算書関係

電子納税については納付書が場面の中に出てきてそのままMPNにつないでいける点において大変便利です。また、納付書を紛失した納税者であっても、現在のように都度都度税務署窓口に日銀番号を入れたプレプリント納付書の発行を受け取りに行く必要もありません。この点から、個人的には大いに利用させていただいています。

納付書

しかしながら大変不思議な問題を含んでいます。
 まず、名古屋国税局との協議会において電子申告について普及しない原因を求められた時に、「納税者にとっての具体的なインセンティブがないから」という結論をお話し、改善についての回答を求めました。これに対して「現行法では紙と電子は同様の扱いをするため、電子だからインセンティブをという取り扱いは現段階では想定できない」(名古屋国税局との実務者懇談会回答)ということでした。
 この論理が正しいとすれば、紙で納税する時はそのまま納付書に記入して銀行へ渡せば済む作業に対して、電子納税になると、実印と印鑑証明に該当する電子署名を付与しなければできないシステムは奇異であります。これは明らかな矛盾であります。紙と同じ扱いであれば、納付書に電子署名の必要はないはずです。
 少なくとも、納税するのに電子署名を付与するのはおかしいといえましょう。他人の税金を代わりに支払う物好きな方が多ければ電子署名は必要ですが、銀行のネットバンクおよびMPN使用時にIDやパスワードで本人確認をしているのですから、印鑑証明同等物をつけてまで、何度も本人確認をする意味はないものと考えられます。
 これは行政とMPNとの連携ができていない現われです。行政機構の縦割りの責任範囲をつぎはぎしようするためにこのような複数の本人確認を必要としていると考えられます。このあたりの手続きをシンプルにしない限り、電子納税の普及は遅れることは明らかです。

NO62 国税申告手続

電子申告を平成16年2月2日より開始し、確定申告時には20件程度の所得税の申告をし、毎月の法人申告については2件平均で電子申告を継続的に実施している者として、下記の件について改善をお願いする次第であります。

1】インセンティブの付与について

電子申告の導入推進に当たり、まず、納税者が積極的に取り組む環境整備をする必要があります。現在のままでは、明らかなメリットは感じられず、申請のためのわずらわしさのみが目に付くところであります。そこで、時限立法で最初の数年間だけと言った形でも結構かと思いますが、例えば所得税であれば青色申告控除クラスの控除を設けていただければ、電子申告の推進はスム−ズになるものと考えます。
 税理士関与の納税者にとっては、税理士に委せた時点で税務申告手続きの煩わしさから解放されるので、その先が紙申告であろうが電子申告だろうがどちらでも良いということになります。すなわち、税務申告の為に今まで以上に、わざわざお金と手間をかけて電子申告をする必要性が全くないというのが税理士関与の納税者の本音であります。それでも電子申告を、というのであれば、やはり何らかのインセンティブが必要です。インセンティブが明らかになれば、税理士としても顧問先納税者に損をさせてはならないので、黙っていても自発的に電子申告に向かうことは明らかです。
 税理士は、68000名のうち40000名がGPKIに接続している日本税理士会連合会の認証局の証明するICカードを取得しております。必要性が生じた段階で、いっせいに使用する体制は整っています。後は、制度の問題です。

2つ目のインセンティブとして、税理士が積極的に電子申告に取り組むためには、税理士がチェックした範囲において、後で送る郵便物の送付を省略できるようにしていただきたいところであります。
 例えば医療費の領収書や、源泉徴収票を、簡易なデ−タに入力することで電子で送ることにより代替できれば、税理士全体の電子申告に対する取り組み姿勢は一層積極的なものになるものと確信しております。
 また、源泉徴収票・支払証明書・第3者証明書などは、税理士が確認すれば郵送不要とし、税理士もしくは納税者の原本保存としていただければ、普及に拍車をかけます。
 実際に、確定申告時期の無料相談時においても、各税務署ごとに取り扱いが異なるようですが、医療費等の領収書はその場で確認し、ゴム印を押して納税者に返却する会場があります。これと同様に、電子申告において30条を添付している税理士が行う場合においては、税理士を信頼頂き添付資料の別途郵送を省略にしても良いという制度にしていただきたい。その担保が税理士資格であっても、普及促進になることは間違いありません。

さらに、税理士法33条の2の書面添付についても普及率の低さに苦慮していると言う報告がありましたが、この制度と電子申告の両制度をあわせることにより、当面の間、税務調査を簡略化するという方向性を明示していただくことを期待いたします。 これにより、電子申告の普及促進も早くなり、かつ、33条の2の添付率向上にもつながります。一石二鳥のアイデアが目の前にあるにもかかわらず、縦割り行政の弊害で実行できないようでは、政府の電子化は見込めません。

参考までに韓国の電子申告に関する報告を書きに引用いたします。韓国政府の柔軟な発想をご検討いただきたいです。

<参考>
 『石井啓一国会議員のホームページより、

2.国税庁イ・ヨンソプ庁長との面談

当方から、韓国の電子申告の割合が法人税で90%、所得税で40%と高い理由を確認した。
 庁長からは、「電子申告・電子納税は、税務当局にとっても事務コストの削減のメリットが大きく種々の促進策をとっている。 広報や利用率の高い税務署の表彰等のほか、韓国では、電子申告を利用する納税者に2万ウォン(約2,000円)の控除を認め、また、関与先の税務申告に電子申告を利用する税務代理人(税理士、会計法人等)に対しても、 一関与先あたり1万ウォン(上限100万ウォン)の所得控除を認めている。韓国で電子申告が急速に普及した要因として、税務代理人の活用、 これを通ずる普及が極めて重要であった。」との回答を得た。』

2】電子申告における「申告書控え」にあたるものの交付について

電子申告の場合には、申告書控えそのものが存在しなくなり、紙ベースの所得証明、納税証明等を使用するしかないこととなると思われます。
 これまで当たり前のようにいただいていた申告書等の控えへの収受印押印も、当局側の納税者へのサービスの一環にすぎず、 提出された行政文書の内容を証明するために行うものではない(「納税者等から提出のあった申告書等の控えに対する収受日付印の取扱要領」)、という前提があることは承知しております。
 しかし、現実に融資等に際し、収受日付印の付いた1表を要求してきた金融機関が認識を変えてくれるかは疑問です。 また、収受日付印の必要な公的機関の窓口がいくつか存在することも事実であります。そこで、電子申告導入当初の一定期間については、納税者の要求により、今までの申告書の控えに相当するものを提供するなどを検討していただきたくお願い申し上げます。
 ちなみに、納税証明書についてはNO15のコメントどおりであります。

3】電子申告における受付時間やヘルプディスクの時間を、できれば24時間365日受付にする

ヘルプデスクについては、365日24時間営業は理想像に過ぎないかも知れませんが、少しでも長時間窓口が開いているようにしていただきたい。
 この要望につきましては、早急に改善いただきまして、11時までの受付や日曜日の受付も始まりました。
 しかしながら、電子化の利点は、時間・空間の制約が少ないことですから、その利点を最大限に生かせる為には、365日25時間受付を十減して頂きたいといえます。

4】税務代理権限証書を提出している税理士について

 税務代理権限証書を提出している税理士が関与する納税者の電子申告にしては、納税者の電子署名は省略できるようにして頂きたい。
 一般納税者にカードリーダライタの取得を求めることが前提となる現在電子申告の環境では、その普及に大いなる疑問が残ります。 ここが私ども税理士が、納税者に積極的に働きかけられないところであります。
 税務代理権限証書を提出している税理士が関与する納税者の電子申告については、委任関係は確認できているものとして、納税者の電子署名は省略できるよう対応して頂きたいと思います。
 そもそも、納税者の本人確認のための公的個人認証(現在は住基カードによる認証)は、使用方法が煩雑であるばかりでなく、 納税者自身に取得のための費用負担とその後の管理のリスクを負わせるものであるため、もっと簡略化された本人確認の方法に変更するか、税理士との委任契約の中で、税理士のみの署名押印で申告可能となれば、その普及促進は期待できます。

5】納税額の多い法人の添付書類について

売上が大きい法人は添付書類も多く、私の所属する民間団体は、郵送すべき書類一覧を表示してくれたので、電子申告はできましたが、e−TAXソフトでその判別をすることになると、莫大な時間を要するものと思われます。

納税額が3000万円以上の場合、添付書類を2部出すという件について、本文は電子申告で行ったから2部必要ないのに、 添付書類は2部提出というのはいかがなものでしょうか。電子申告を行えばそのデータは電子ですから、コピー等はそれほど事務負担が無いはずです。事業規模の大きな法人の場合、添付書類だけでも分厚くなります。本来は、それを回避するために電子申告であるはずです。

以上

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